眼鏡男子のあれこれ

眼鏡男子があれやこれやと書いていくそんな場所。

僕の顔には何て書いてある?⑤

   中に入ると、カフェのような椅子とテーブルが置いてあり、各テーブルに男女が一組ずつ座って自己紹介やらPRなどをしていくのだ。対面式なので、まるで面接を受ける感じだ。将来を共にする人を選ぶのだ、真剣なのは当然だろう。

 

   だいぶ早く着いてしまったようで、まだ数名しか会場にはいなかった。皆、綺麗に着飾っている。僕はどうだ。無難ではあるが、パッとはしないというのが自分の評価だ。先に入っていた男女が軽い挨拶などを交わし、話していた。

「今日はどこから来たんすか。」男が聞く。

「市内ですよ。〇〇さんは。」

という会話の最中、二人の顔を例によって僕は見ていた。

男(あー、早く来過ぎた。暇だな。とりあえずこの子で暇つぶしだな。早く可愛い子来ないかなー)

女(対応面倒。とりあえず話し合わせとくか)

今日もまたチグハグだなと顔を違う方向へ向ける。

 

   するとそこには物静かに本を読んでいる女性がいた。彼女が読んでいる本は昔僕も読んだことのあるもので、内容は確かブライダル業界で働く女の子が主人公が奮闘する話だった気がする。顔から心の声が漏れ出ている。

(この上司絶対おかしい。主人公に失礼だ。)等々顔に感想が流れているのを見ていると、彼女と目が合った。彼女の感想文を追いかけるのに夢中で気が付かなかったのだ。気まずくなり目を反射的に逸らした。視線を戻すと彼女は読んでいた小説を鞄に入れ、立ち上がりこちらに近付いてきた。変な顔で見ていたのだろうか、そんな変なつもりはないんですなどと焦っていると、顔を耳元に近付け小声で彼女がこう言ってきた。

「今私の心の声を見ていたでしょう。」と