眼鏡男子のあれこれ

眼鏡男子があれやこれやと書いていくそんな場所。

僕の顔には何て書いてある?⑥

確かに右耳から彼女の口から出た言葉は聞こえたのだが、危うく反対側から出そうになりそうになったところでやっと意味を捉えた。

 

「え、今何て…」と声のする方へと顔を向けながら、何とか口から言葉を絞り出す。すると彼女はしたり顔でもう一度言った。

 

「今さっき君は私の心の声を見ていたんでしょ。」

(目が合った時、君の目を見てすぐわかった。あぁ、この人も同じなんだ)

この人の言葉と心はチグハグじゃない。僕はまさかこんな偶然があるなんてと驚きを隠せずにいると、彼女は先程僕が見ていた男女の方を見ながら言った。

 

「あそこで話をしている二人。会話はしているけど、心は全然噛み合ってないね。チグハグだわ」

彼女の言葉選びにまたどきりとした。チグハグ。彼女と僕ならばそんなことにはならないのだろうか。さっき僕の顔を見ていたのか聞きたくなったが、その前に自己紹介もしていない事に気付き、質問はまた後でということにした。

   丁度僕が口を開こうとした時、司会が会場に入ってきて今回の婚活パーティが始まった。


「皆様、こんにちは。今回この企画を選んでいただき、誠にありがとうございます。私、今回の司会進行役を務めさせていただきます…」と司会が始まりの挨拶をしている時に彼女は「また後で」と僕に言い、元いた場所へと戻っていった。きっと僕の顔はぽかんとしていたのだろう。

彼女はさっきと同じようなしたり顔だった。